今回はマラソン界のレジェンド、エリウド・キプチョゲの驚異的なランニングフォームについて深掘りしていきます。彼の動きを楽に再現する方法、そして今回は特に注目すべき「膝の折り畳み角度」についてお話しします。
はじめに
1: キプチョゲとは?
まず、エリウド・キプチョゲ選手について簡単にご紹介します。彼はケニア出身のマラソンランナーで、世界記録保持者です。2019年には、非公式ながらも2時間切りを達成し、その名を歴史に刻みました。
2: キプチョゲのランニングフォームの特徴
キプチョゲのランニングフォームにはいくつかの特筆すべき特徴があります。まず、彼のフォームは非常に経済的で、無駄な動きが一切ありません。そして、特に注目すべきは彼の「膝の折り畳み角度」です。では、この踵の引き上げがどのように彼のランニングに影響を与えているのでしょうか?蹴り出し後の「足の蹴り上げの高さ」を角度として測定しています。
私の場合63°ですが、マラソン時のエリウド・キプチョゲ選手は同様の計測で79°・大迫傑選手は77°でした。
3: 踵の引き上げの真相
専門家によると、踵の引き上げはエネルギー効率を大幅に向上させる要素の一つです。膝を折り畳むことで、足の回転数を増やし、一歩一歩のストライドの長さを最適化できます。また、この動きは脚の筋肉への負担を軽減し、長距離を走る際の疲労を抑える効果もあります。
しかし実際この「膝の折り畳み角度」いちいち意識しているのでしょうか?
膝の折り畳みを「意識してない」
1: 二重振り子
皆さんは、走るときに脚をどうやって動かしているか考えたことありますか?実は、脚の動きは「二重振り子」と呼ばれるものに似ています。
まず、脚を振り子のように考えてみましょう。腰の部分が固定されていて、脚が前後に振れます。これは、一つ目の振り子のような動きです。しかし脚だけじゃなく、脚の先には足がついているので、今度は膝を曲げて足を前後に振ってみる。これが、二つ目の振り子です。そのため、走るときには、腰から脚が振り子のように動き、さらに膝から下の部分がもう一つの振り子のように動いています。これが「二重振り子」の仕組みです。
この二重振り子運動で踵が勝手に上がる様子を表した様子がこの動画(↓)になります。
この動画が例として表すように腿が鋭く振り出されれば二重振り子の原理で勝手に踵が引き上がるのです。この原理に基づき意識的に踵はあげていません。そのため必要になってくるのはこの鋭く降り出す時に使われる腸腰筋という筋肉です。
腸腰筋(ちょうようきん)は、体の中で大腰筋(だいようきん)と腸骨筋(ちょうこつきん)という二つの筋肉が一緒になったものです。この筋肉は、主に股関節(こかんせつ)を動かす役割を持っています。ではこの腸腰筋を「鋭く」働かせるにはどうしたら良いのでしょうか?振り出す動きだけを鍛えれば良いのでしょうか?
2: 伸張反射
伸張反射(しんちょうはんしゃ)というのは、筋肉が急に引っ張られたときに、その筋肉が素早く縮む反応のことです。これは、筋肉の長さを一定に保つための自動的な仕組みです。腸腰筋の伸張反射を簡単に説明すると、次のような流れになります。
まず腸腰筋が急に引っ張られると、筋肉の中にある「筋紡錘(きんぼうすい)」というセンサーが伸びを感じ取ります。次に筋紡錘が伸びを感じると、その情報を感覚神経を通じて脊髄(せきずい)に伝えます
脊髄でこの情報を受け取ると、すぐに運動神経を通じて腸腰筋に「縮むように」と指示を出します。運動神経が腸腰筋に信号を送り、筋肉が縮んで元の長さに戻ります。
この流れによって、腸腰筋は必要以上に伸びることを防ぎ、体のバランスを保つ助けをしています。ここで大事なことは振り出そうとしているのではなく地面を押す際、既に伸張反射の準備ができていて押し出した後はこれも勝手に振り出されるということです。よくよく考えてもみたら皆さんレース中ずっと振り出しを意識し続けるなんてほぼ不可能ですよね。
では伸張反射が準備された状態とはどんな状態でしょうか?これをこの動画で説明します。赤いゴムチューブが腸腰筋。柔らかいティッシュが弱い体幹でシューズが硬い体幹を表しています。
みんさんもご想像の通りシューズを軸にした方が勢よくゴムチューブが動きますよね。要するに硬い体幹に伴って腸腰筋が伸張反射される状態。これが伸張反射が準備された状態と言えます。また腸腰筋がしっかり伸ばされるためにも「骨盤を前傾させないよう固定する腹筋やハムストリングス」。また、振り出しとは逆に「後方にキックする下肢筋力」も鍛えておきたいです。
キプチョゲの動きを再現するトレーニング方法
さて、ここからはキプチョゲの踵の引き上げを再現するための具体的なトレーニング方法を、二重振り子の原理と伸張反射のメカニズムに則り2つだけご紹介します。
1.片脚腸腰筋スローイング
こちらは私の造語です。この動画のような動きをしていただくのですが、これにより鳩尾(みぞおち)下から股関節あたりまでの伸張反射を促します(トレーニング動画↓)
ここで絶対に注意してほしいことは「腰を反らない」ことです。サッカーのシュートの様な動きで鍛えるのも構わないのですが、動画のように片脚を何かに乗せた方が腰が反らない意識を作りやすいので私はこちらを推奨しています。さらにこの方が鍛える方の腸腰筋がしっかり伸張反射を起こせるくらい伸ばすことができます。回数に関しては、先日ブログや動画でご説明したのですが、ここはボリュームを出して良い体幹に当たるので10回ぎりぎりできる負荷でやると言いと考えます。
動画はメディシンボールを持ったり、ウェイトベストを着ても良いかもしれません。
2.スクワット
特に下肢の筋力を強化することで、地面を押す力が上がり、間接的に腸腰筋の伸張反射を促します。結果、その後の振り出しで膝の折り畳みである二重振り子運動がスムーズになります。スクワットやデッドリフトなどの基本的な筋力トレーニングが有効です。よく走りの動作に近づけるためにクォータースクワットで良いと言った考えがありますが、私としてはフルスクワットも取り入れて良いと思っています。理由は単純に股関節の可動域が上がるからです。ご要望があればまたこの辺りの説明もしますね。
中学生までは成長軟骨に負荷をかけないため自重で実施することをお勧めします。また高校生以上であれば積極的に画像のようにバーベルを使って負荷をかけて欲しいです。研究によると骨端線が閉じた高校生がもう1段階「背を伸ばす」ために、筋トレによる「テストステロンの分泌」が関与するとも言われています。私も高校時代もっと積極的に筋トレをやっておけばよかったです。
当店アフロのサービスでは、最新の研究に基づいて、中学生から一般の方までランナーのための安全なウェイトトレーニングを提案しています。
これらのトレーニングを日々のスケジュールに取り入れることで、あなたもキプチョゲのような効率的なランニングフォームを手に入れることができます。特に腸腰筋スローイングは初めの頃かなり筋肉痛になるかもしれません。最初は難しく感じるかもしれませんが、継続的に練習することで必ず効果が現れます。
また、実際に「走るとき」も体幹の固定と股関節の前がストレッチされるような接地を心がけてください。
終わりに・大森のトレーニング2024年9月10日から9月13日
いかがでしたか?今日はエリウド・キプチョゲのランニングフォームと、それを楽に再現する方法についてお話ししました。 以下は私の2024年9月10日から9月13日のトレーニングです。
9月10日;①3.42km外jog
・4:53/km(ペース)
・143bpm(平均HR)
・162spm(ピッチ)
②60mダッシュ×5本(登り2本+平地3本)
③レジスタンス&プライオ
1set目:フルスクワット50kg×5回+ダンベルチェストプレス片方9.5kg×10回+片脚腸腰筋スローイング(メディシン4kg+ウェイトベスト10kg)×5回→懸垂2回→膝立ちグッドモーニング(ウェイトベスト10kg)×5回※アシストバンド付き+直角エルボーレイズ左右計9.5kg×10回+ ドロップハードルタックジャンプ68cm2台×5回+直角エルボーエクステンド9.5kg×10回
2set目: フルスクワット50kg×5回+ダンベルチェストプレス片方9.5kg×10回+片脚腸腰筋スローイング(メディシン4kg+ウェイトベスト10kg)×5回→懸垂2回→膝立ちグッドモーニング(ウェイトベスト10kg)×5回※アシストバンド付き+直角エルボーレイズ左右計9.5kg×10回+ ドロップハードルタックジャンプ68cm2台×5回+直角エルボーエクステンド9.5kg×10回
④OBLAペース(時速18.5km)でモーションメディックス撮影
コメント:湘南国際まで本格的に筋トレに取り組む。一応10月の大井川まではレース週以外週2回入れる。大井川以降はレジスタンスパートを1setとし、2set目の変わりに低酸素HITTを入れる。今日やって気づいたことはスクワットやランジをやった直後身体が軽く感じるものの、実際の走りとなると種目の特性上股関節の伸展が出ない。動画を見て気付いたが、体感的にもクアドに入り過ぎ、長く走れなそうな感覚があった。そのため片脚腸腰筋スローイングを実施。腰が入る感覚が掴めるた。(メディシン0kg+ウェイトベスト0kg)としているが、実際には錘を持っていた。次回からメディシン4kgから段階的にウェイトベストも使って負荷を上げる。
9月11日;1.6km×3 水ヶ塚クロカンコース(アップダウンあり)
10kmペースからハーフマラソンペース rest5分
タイム:mごと()内は心拍数
①77.49(118)80.45(144)80.61(155)77.60(156)※156spm
restjog(128)
②76.47(131)78.19(160)77.48(167)76.65(166)※193spm
restjog(133)
③74.59(125)77.60(155)77.70(164)76.24(167)※192spm
コメント:こういうウッドチップのクロカンコースだとしっかりと地面に圧をかけないとピッチが上がらない。でもそのおかげであまりジストニアは出ない気がする。前回、心拍数180以上まで上がっていた心拍数。ペースは同じかむしろ上がった割に、心拍数はそこまで上がらない。でも呼吸はしっかり荒れた。腕が痺れるくらい、どちらかというと上半身に乳酸が溜まった感覚。
9月12日;10.18kmjog芝
平均ペース(/km);5:48
平均心拍数(/分);141
平均ピッチ(spm):156
コメント;とにかく暑かった。抜ける感覚はに中足骨底でバネを作るといい感じ。ただ、どちらの足もそこを意識した方がいいけど、左から意識して右もそこを意識すると接地時間の短縮に繋がっている。
9月13日;30km走 水ヶ塚750mコース40周(Eペース+10秒/kmから開始→最終的にはEペースまで上げる)
計;2:05:59
平均ペース(/km);4:12
平均心拍数(/分);160
平均ピッチ(spm):168
コメント;3回くらい山中湖で27km走をこなしていたため、終盤までエネルギーの切れる感覚はなかった。初めはゆっくり、リズムが取れるようになってから自然なビルドアップ。ただペースは終始呼吸が乱れない程度を意識した。クロカンコースであったので登り降りのリズム取りが最初難しかった。曇っていたこともあり下界より10℃くらい涼しかった。これから温暖化の影響もあるので距離走は10月の頭くらいまでここでやっていいと感じた。
アフロランニング&ボディメイクでは今日お話しした「膝の折り畳み角度」などはもちろん、他にも一流選手の傾向に基づく解析要素を計測します。対応エクササイズも丁寧にご説明いたしますので、一流選手に限らず、走り初めたばかりの市民ランナーさんも遠慮せずにご来店ください。今回は以上になります。また次回の記事でお会いできること楽しみにしています。ご閲覧ありがとうございました。