こんにちは、理学療法士ランナーの大森です!今回は、世界トップクラスのランナー、ヤコブ・インゲブリクトセンがなぜ速いのか、その秘密に迫ります。特に注目したいのは「太ももの振り戻し角度」についてです。
はじめに「驚異のランニングマシーン ヤコブ・インゲブリクトセン」
ヤコブ・インゲブリクトセンとは?
まずはヤコブ・インゲブリクトセンについて簡単に説明しましょう。ヤコブはノルウェー出身の中距離ランナーで、特に1500mと5000mの種目で活躍しています。彼はわずか10代で欧州選手権や世界選手権で数々のタイトルを獲得し、その才能と努力で世界中の注目を浴びています。以下の動画はあまり日本では認知されていなかった2019年のものですが、この時すでにヤコブの活躍を予想しており「1500mで3分21秒と5000m12分27秒〜37秒を24歳〜29歳までに出す」予想も報告しています。当時の私はそこまでなるか?と懐疑的でしたが、実際に1500mはあと1秒以内で世界記録(2024年9月18日現在)ですし、2000m・3000mでは世界記録も出しており、いよいよ現実味が出てきました。中長距離種目でアフリカ系民族以外の世界記録。本当に叶ったら凄いですね。英語ではありますが、トレーニングや動き作りの参考になるので是非ご覧ください↓
速さの秘密 – 「太ももの振り戻し」
次に、彼の速さの秘密について少し掘り下げてみましょう。「高いゾーン」におけるトレーニング頻度や「幼少期の走り込み」「ダブル閾値」といった運動生理学的な視点に注目が行きがちですが、私は動き、すなわちバイオメカニクス観点から彼の強さを深ぼってみました。特に注目すべきは「太ももの振り戻し」というテクニックです。これはランニング中に太ももを素早く元の位置に戻す動作のことで、これによりランニング効率が劇的に向上します。
ヤコブはこの「振り戻し」の技術を完璧にマスターしており、それが彼の高速走行を支えています。脚の動きがスムーズで効率的であるため、無駄なエネルギーを使わずにスピードを維持することができるのです。
太ももの振り戻し
太ももの振り戻し角度とは?
「振り戻し」とは何かについてもう少し詳しく説明します。
これは腿(もも)を着地の瞬間までにどれだけ引き戻せているかを角度で表したものです。この動作がスムーズだと、走行中のエネルギー効率が向上します。「着地点を体の中心の真下に持ってくる」事ができれば、着地時のブレーキはほとんどかからず、非常に効率的に着地を行うことができます。必要以上に前に着地すればその分ブレーキが大きくなったり、接地時間が長くなってピッチを上げることができなかったりと、デメリットが多くなります。
ヤコブ・インゲブリクトセンの振り戻し角度
さて、ヤコブ・インゲブリクトセンの動きを見てみましょう。彼の太ももの振り戻し角度は27°、この振り戻しの正確さと速度が、彼の驚異的なパフォーマンスを支えています。ちなみに大迫傑選手が21°。エリウド・キプチョゲ選手は25°でした。
さらに、ヤコブ選手はこれに加えて「膝下振り戻し角度」も高いです。これは着地直前の脛(すね)が一番伸びた位置から着地までの角度を測定したものです。これが大きい方が次のストライドへの推進力を上げることができます。そしてこの角度が大きくなることで着地位置がより体の重心に近づく効果も期待でき、これにより接地時間短縮や、いわゆる「ブレーキ」の動作が減ります。一般的なランナーで3〜6°とされますが、ヤコブ選手の角度は7°。かなり高い部類の選手になります。膝下の振り戻し角度に関してはまた改めて別記事で紹介しますね。
重心と接地
やってもらうとわかるのですが、普通、ヤコブのようにここまで体幹を前傾させると、重心の真下に着地するのは難しいです。しかし、ヤコブはこの驚異的な振り戻し角度を持つことで、体の重心に非常に近い場所に着地することができています。これにより、エネルギーのロスを最小限に抑え、効率的に前進することができるのです。
上半身の質量重心の活用
さらに、ヤコブのランニングフォームは、上半身の質量重心を最大限に活かせるよう設計されています。これにより、より少ないエネルギーで速く走ることが可能になっています。もしあの前傾フォームで振り戻しができなければかなりブレーキがかかってしまうでしょう。逆に振り戻しによって地面の反発を推進方向に活かせたら彼の質量重心を最大限に活かして進むことができます。上半身の質量重心に関しては以前投稿した筋トレに関する動画で述べているのでリンク載せておきますね↓
市民ランナーが取り入れる方法
では、これを市民ランナーがどう取り入れるかについて考えてみましょう。まずは、彼の前傾フォームはいったん置いておいて、自分の振り戻し角度の改善を意識してみてください。これは走り方がどうであれ、万人に共通する課題です。練習方法としては、ドリルやスピードトレーニングを取り入れることが効果的です。特に、フォームを意識しながら走ることが重要です。これにより、効率的な振り戻し動作を身につけることができます。ドリルの詳しい内容に関してはこちらの動画を参考にしてみてください↓
終わりに・大森のトレーニング(2024年9月16日から18日)
いかがでしたか?今回は、ヤコブ・インゲブリクトセンがなぜ速いのか、「太ももの振り戻し角度」に絞ってその秘密に迫りました。彼の驚異的な振り戻し角度と効率的なフォームは、市民ランナーにとっても多くの学びがあります。ぜひ参考にしてみてください。
以下2024年9月16日から18日までの私の練習です。参考まで!
9月16日;10.18kmjog芝
平均ペース(/km);5:48
平均心拍数(/分);141
平均ピッチ(spm):156
コメント;右足後脛骨筋腱の痛みは減ってきた。右手の内方化意識が、痛みを減らしているし、昨日もそうだが勝手に振り出されてしまう感覚も減ってきた。ただ脚はかなり重い。筋トレの疲労がまだ抜けてない。暑さもあった。日がかげると少し楽。昨日は晩は暑かったが、朝方肌寒い。終了後のダッシュはアフロサーキットでやることにしてjog自体は少し伸ばす。
9月17日;アフロサーキット
①アップ富士陸上競技場まで往復(傾斜の急なアップダウンコース)
3km・5:09/km・平均HR142bpm・ピッチ159spm
②レジスタンス&プライオ
1set目:フルスクワット50kg×5回+ダンベルチェストプレス片方9.5kg×10回+片脚腸腰筋スローイング(メディシン4kg+ウェイトベスト10kg)×5回→懸垂2回→膝立ちグッドモーニング(ウェイトベスト10kg)×5回※アシストバンド付き+直角エルボーレイズ左右計9.5kg×10回+ ドロップハードルタックジャンプ68cm2台×5回+直角エルボーエクステンド9.5kg×10回
2set目: フルスクワット50kg×5回+ダンベルチェストプレス片方9.5kg×10回+片脚腸腰筋スローイング(メディシン4kg+ウェイトベスト10kg)×5回→懸垂2回→膝立ちグッドモーニング(ウェイトベスト10kg)×5回※アシストバンド付き+直角エルボーレイズ左右計9.5kg×10回+ ドロップハードルタックジャンプ68cm2台×5回+直角エルボーエクステンド9.5kg×10回
③モーションメディックス 撮影 時速18.5km
コメント:本格的に筋トレに取り組みはじめてから、動きが安定してきた。また、筋トレをしたことで可動域を伴うドリルもふらつきが無くなってきた。全ての動作において若干胸が張れてないところもあったので、腰椎の反りを抑えながらそこも両立していく。一応10月の大井川まではレース週以外週2回入れる。大井川以降はレジスタンスパートを1setとし、2set目の変わりに低酸素HITTを入れる。今日やって気づいたことはスクワットやランジをやった直後身体が軽く感じるものの、実際の走りとなると種目の特性上股関節の伸展が出ない。動画を見て気付いたが、体感的にもクアドに入り過ぎ、長く走れなそうな感覚があった。そのため片脚腸腰筋スローイングを実施。腰が入る感覚が掴めるた。(メディシン0kg+ウェイトベスト0kg)としているが、実際には錘を持っていた。次回からメディシン4kgから段階的にウェイトベストも使って負荷を上げる。
9月18日;1.6km×3水ヶ塚(クロカンアップダウンあり)
10kmペースからハーフマラソンペース rest5分
タイム:392mごと()内は心拍数
①77.14(143)79.39(171)79.03(161)78.43(160) ※191spm
restjog(131)
②76.15(121)79.44(149)80.96(163)78.79(160)※188spm
restjog(129)
③75.38(132)78.18(154)78.27(160)76.57(165)※194spm
コメント:落ち着いて入るつもりが落ち着きすぎた。心拍数もあまり上がってはいない。ただ、脚が少し重いと感じた。
以上になります。それでは、次回の記事でお会いしましょう。ご閲覧ありがとうございました!