こんにちは、理学療法士ランナーの大森です。今回は「足首の背屈筋力がランニングを楽にする」というテーマでお話しします。ランニングが楽になるコツを知りたい方、必見です!
はじめに・不破聖衣来選手とは?
不破聖衣来選手は、日本の女子長距離ランナーで、特に10000mの競技で優れた実績を持っています。中学3年生の時に「炎の体育会TV」に出演「マスクドランナーvs.小中学生天才美少女アスリート軍」と題された企画に挑戦し、五輪2大会連続2種目金メダリストと対決しました。
中学卒業後は、高崎健康福祉大学高崎高等学校に進学。高3の12月には5000m2020年度の高校ランキング1位となる15分37秒台を叩き出しました。拓殖大進学後、1年生ながら12月の「関西実業団ディスタンストライアル」において30分45秒21のタイムを叩き出し、日本歴代2位を樹立しました。バーンアウトやオーバートレーニングに注意さえすれば、今後も世界と渡り合える活躍が期待されます。
そんな不破聖衣来選手のランニングフォーム。特に足首が特徴的です。例えば、彼女の走りでは、足が地面に着地する際と蹴り出しの際に、自然と足首が背屈され、次のステップへとスムーズに移行しています。この動きが、彼女の速さの秘密なんです↓
では、具体的になぜ足首背屈がランニングにとってプラスに働くか?またどうやって足首背屈を鍛えるのか、今回はそこに焦点を当てていきます。
足首の背屈とは?
まず、足首の背屈について説明します。背屈とは、足首を上に持ち上げる動きのこと。つま先が上を向くことで、地面を蹴る力を効率的に使えます。
この動きができると、ランニング時のフォームが自然に整い、無駄な力を使わずに走れるようになります。足首の「背屈」に注目して、もう一度不破選手の走りを見てください!↓
背屈筋力がもたらすメリット
次に、背屈筋力がランニングに与えるメリットを見ていきましょう。
効率的な推進力
正しい背屈運動ができるとポステリオールチェーン筋群、体の背部の筋肉群が生み出すパワーも上手く活用できるようになります。結果的に地面を蹴る力が増し、前に進む力が強化されます。ポステリオールチェーン筋群とは殿筋、背筋、ハムストリングスのように身体の後面で連動して働く筋群のことです。
身体を前方に加速させたり、ブレーキをかけたりする時に、よく働いています。ランニングで地面をキックするときには、強い力を出す必要があります。殿筋がしっかりと機能して、背筋群、ハムストリングスなどとうまく連動できれば、パフォーマンス向上になります。
ふくらはぎのような大きくて強い筋肉の運動とは異なり、背屈運動は日常的な筋肉運動ではありませんし、ランニングを始めたばかりのランナーは意識できていません。ですので、楽に速くを目指すためには、背屈運動をしっかりと意識しポステリオール筋群を働かせる必要があります。
怪我の予防
正しい姿勢で走ることで、膝や腰への負担が軽減され、怪我のリスクが減ります。正しい背屈運動をしていれば、正しい位置に足が置けるようになるので、怪我を防げるようになります。正しい背屈運動で理想的な位置に着地すれば、着地の衝撃を吸収しつつ、次の一歩を大きく踏み出すための筋肉を収縮させることもできます。
また、正しい背屈運動は接地時間を減らすので、より速く、より効果的なランニングができるようになります。正しい背屈運動ができていない人は、不安定な足首でつま先から着地するので、パワーを正しく伝達できません。これは、シンスプリントのような怪我に繋がります。ちなみに私の考えでは「背屈意識の結果それでもつま先付近で接地する」のであれば、その人にとって「フォアフット走法」が向いているのだと感じています。それでも決してつま先から着こうと意識してはいけません。
背屈運動ができない原因
背屈運動が正しくできていない場合は、いくつかの原因が考えられます。簡単に修正できる一般的な原因は、下腿(膝から下)のポステリオールチェン筋群の柔軟性の低さです。この部分の筋肉群が硬いと、背屈運動の可動域が狭くなります。
もうひとつの原因は、足首の関節の柔軟性の低さです。これは、関節包(関節を包む筋)や瘢痕(はんこん:傷跡)組織の硬化、足首の関節の癒着などによって起きます。また、捻挫など、足首周りの過去の怪我によって引き起こされる場合もあります。
組織や柔軟性に問題がない場合は、単純に前脛骨筋(スネの筋力)が弱いことも原因として考えられます。
この部位は、意識していない、あるいは正しいテクニックを使っていないと十分に動かされないので、結果的にすぐに疲労してしまうのです。
背屈筋力を鍛える方法
それでは、背屈筋力を鍛えるためのエクササイズをいくつか紹介します!これは当店アフロで提供する一部ではありますが、効果はあるので是非やってみましょう!ちなみに目的を意識して継続することが大事です。やらなくなったら効果は得られません。
しゃがみ込みストレッチ
伸ばしたい方の膝を立てて、反対脚は倒しながらしゃがみ込みます。ポイントとしては先に長趾伸筋と骨間背側筋の癒着を剥がすことと、距骨の押し込みです。15回左右1setを目安にやってみましょう。
片脚立ち背屈アイソメトリック
片膝を腹部方向に上げて片脚で立ちます。膝を尻(腰)の高さまで上げたら、そのすねを地面に対して垂直にします。上げてある脚のつま先をすね側に引き寄せて、30秒間キープしましょう(前脛骨筋に刺激が入ります)。両腕はランニングフォームを取り、軸足側の尻にも力を入れます。脚を入れ替えて1セットです。3セット繰り返しましょう。この動きで股関節の前面、鼠径部の辺りを使うような感覚になりませんか?これは振り出しの際に使う筋肉です。要するに振り出しの際も足首の背屈をしていた方が良い訳です。これが以前動画でも説明した腸腰筋です↓まだ動画をご覧になってない方は見てください!背屈に加えてこの動かし方のイメージで走ると、最も無駄なくきれいに足が前へ上がってきます。
チューブ背屈
まず、テーブルの脚やポールなどにチューブ(レジスタンスバンド)を結んでループ状にします。次に片脚を伸ばして床に座り、レジスタンスバンドをつま先に通します。座っている位置をレジスタンスバンドから遠ざけていき、適度な負荷がかかるようにします。ここまでできたら、つま先を前後に動かす運動を20秒間で12往復繰り返します。これを1セットとして、2~3セット繰り返します。
ヒールウォーク
かかとで立ち、つま先をすねに向けて持ち上げます。膝が固まらないように注意してください。この状態をキープしながら、両腕をランニング中と同じように振りながら20m歩行します。これを3セット繰り返します。すねに多少の痛みを感じるはずですが、シンスプリントではありません。前脛骨筋が正しく刺激されている証拠ですので安心してください。
入れ替え連続ジャンプ
片脚を台に乗せ交互にジャンプする運動。いわゆるプライオメトリクスの一種です。着地時に足首を背屈させ「踵で跳ねること」を意識します。これによってアキレス腱の伸張反射を促します。踵がつかないつま先接地ではこの伸張反射は生み出せません。この動きを左右合計20回やりましょう。伸張反射に関しても以前投稿した動画をご参照ください!↓
終わりに・9月22日から26日大森の練習
いかがでしょうか?今回は不破聖衣来選手のような足首背屈について。またそれががランニングを楽にする理由と、テクニックを真似る方法を紹介しました。普段使っていない筋肉は使い方が分からないのは当たり前。少しずつ使ってあげることで感覚が出てきます。最初はぎこちなく感じるし、パフォーマンスにすぐ現れないかもしれません。一時的に低下することもあるかもしれません。私もそうです。でも理論的にも、一流選手の動きを見ても「背屈」動作の獲得はマストなので、諦めずに一緒に継続してみましょう!注意点として実際のレースでは意識しなくても背屈できているのが理想です。頭で色々考えていてはそのこと自体に余計なエネルギーを使うからです。特に末端の意識は本来持たない方が良いとされています。今回は足首の背屈筋力がランニングフォームを楽にする理由と、その鍛え方についてお話ししました。背屈筋力を意識することで、より快適なランニングライフを送ることができます!以下は9月22日から26日の私の練習です。
22日;休養 温泉・マッサージ コメント:連日の暑さも今日は幾分収まったか。ただ起き掛けの下肢全体の筋肉痛はひどい。気持ちが上向くまで、いったん走ることから離れてみようと思い思い切って完全休養。こういうのは日にち薬しかないと思う。エネルギーが充電される感覚は必ず戻るはずだから少し追い込み切るトレーニングから離れよう。
23日;12.28kmjog芝+50m×3
平均ペース(/km);5:40
平均心拍数(/分);132
平均ピッチ(spm):163 コメント;一日完全休養を取ったが起きがけ脚は重い。暑かったら水中ウォークにしようかと思っていたが、思いのほか涼しかったから軽めのjogにした。涼しさもあって若干心拍数も抑えられたか。「腸腰筋上体起こし」をやってから走ってみた。つま先を上げる意識もしながら、膝は上というより前に素早く振り出すイメージ。また同時に反対脚で真下接地も意識しないとスカスカした走りになるので気をつけたい。ただ、まだオーバーリーチングから回復しきってないので明日もjogで様子を見たい。
24日;12.28kmjog芝+50m×3
平均ペース(/km);5:29
平均心拍数(/分);147
平均ピッチ(spm):158 コメント;今日も涼しかったから軽めのjogにした。今日も「腸腰筋上体起こし」をやってから走った。つま先を上げる意識もしながら、膝は上というより前に素早く振り出すイメージ。また真下接地というか足の真上に腰の移動を意識する感じ。
25日;(300×3)×2ウェルピア(長泉町内の公園) 内容:300は1500ペースから-3秒rest3分 set間10分
使用シューズ ヴェイパーフライ タイム:()内rest時心拍数
1set目;47.51(128)47.88(129)47.81
set間(117)
2set目;47.72(142)47.87(148)47.97
コメント;風の強さはあったもののタイムはイマイチ。息の上がり方も尋常じゃない。また左足で押し出しと右足の真っ直ぐっした振り出しを意識しないと右脚がやはり勝手に
降り出される。少し右下腿はシンスプリント気味でもある。距骨のほぞ穴部分も痛みがある。長趾伸筋腱の滑走障害もありそう。モビライゼーションと背屈意識で改善できるとして、オーバーワークは休むしかなさそうだ。
26日;1.6km×3長泉ウェルピア外周コース(多少アップダウンあり) 10kmペースからハーフマラソンペース rest5分 タイム:857mと743mごと()内は心拍数
①2:49(149)2:27(165)188spm
rest7分jog(115)
②2:52(155)2:29(166)188spm
rest7分jog(125)
③2:56(164)2:32(183)189spm コメント:右下腿のシンスプリントも少しあったが、やはりどんどんタイムが落ちている。ただ足の背屈を意識すると脚が勝手に振り出される感覚は少ない。しかし右ばかりに意識が向きすぎて左の背屈が少なく、ビデオをみてもやはり膝が振り出しの早い段階でリーチアウトしている。中三日だけ落とすだけだと少し厳しいか。今度は二日ノーラン(水中トレーニング)にし、日曜日から走り始める。それも低強度で実際しそれを二日。来週の火曜に流しを入れ始め、水曜に昨日やった300のレペをやり始める。そうすれば5日落としメニューになる。それでも力が入らないかもしれない。少なくとも来週の水曜日に昨日よりタイムが落ちるのであれば本格的に長期休養を要する。水曜日に感覚を少しでも戻せたなら週末の東海大1500に出場する。とにかくポイント練習をやりたいと心から思えるまでは中強度以上の運動を避ける。筋トレもしない。筋トレは筋トレとしての時期を作るべきだったと同時進行で入れたことが裏目に出た気もする。とにかく水中トレーニングとスローjogで足首や腸腰筋の使い方をじっくり固めていきたい。
こんな感じです。明るい話題ではなかったかもしれませんが、できるだけこのようにリアルな現状をお伝えできたらと思っています。今後もランニングに役立つ情報をお届けします。それでは、また次回の投稿で皆さんとお会いできること楽しみにしています。ご閲覧、ありがとうございました!