理学療法士が考える「インターバル走」速すぎは効果薄

 インターバルトレーニングとは、高強度の運動と短い休息を繰り返す練習方法です。これにより、持久力やスピードが効率よく向上します。さて、このインターバルトレーニングの方法や効果について、皆さんどのように考えますか?私の考えを結論から先に述べると

・インターバルトレーニングは最大酸素摂取量を高めるトレーニングとして有効で、距離と休息時間を適切に設定することが重要※速すぎても本来の効果が期待できず疲労が残る

・特に「10kmくらいのレースペースで5分間 」を「3〜5本」「レストも5分」とるといったメニューがお勧め※レース前は実際のレーススピードを意識した練習も入れる

といったところです。これからその詳しい内容をお話しします。

<効果的なインターバルトレーニングとは>

 インターバルトレーニングは一般的に400m×10本や1000m×5本といった距離がよく使われます。

 私も以前、このようなトレーニングをよく行っていました。目標が5000mを14分台で「このペースを楽に感じられるようにするため、より高い負荷をかけることが大事」と考えていました。設定タイムは「目標の5000mペースより-4秒から-2秒/400m(休息時間30秒)」といった感じでした。しかし、これはインターバルトレーニングの本来の目的から少し外れている面があり、非効率的だったと感じています。実際、何度もこの練習を繰り返し70秒を切ることができていても、5000mで14分台は出せませんでした。つまり、僕はインターバルトレーニングを「スピード」のトレーニングと捉えていたことが間違いだったのです。

 「最大酸素摂取量」という言葉をご存知でしょうか?これは単位時間あたりに体内に取り込める酸素の量を表す能力です。この能力が高いほど、中・長距離走者には有利です。酸素が関わるから有酸素運動です。そして、この能力を高めるトレーニングがインターバルトレーニングなのです。つまり、有酸素能力を高めるためのトレーニングであり、無酸素運動能力を高めるためのトレーニングではないのです。ジャック・ダニエルズ氏によれば、このペースを5000mペース以上にしてもあまり変わらないと言っています。また、ダニエルズ氏は「スピードを出して追い込んでも効果がないなら、それ以上の追い込みは意味がない」とまで言っています。確かにその通りですね。正しいトレーニング方法を理解し、効果的に取り組むことが重要です。

<インターバルトレーニングの適切な設定>

 と言うことは「単位時間あたりにMAXで全身に酸素が送れる最低限の速度」が一番「ローコスト・ハイリターン」という訳です。それでは正しい「時間と強度」とは具体的に言ってどのくらいなのでしょうか?そもそも有酸素的な効果を得るために400mや1000mの距離だけで十分なのでしょうか?

 実は、適正ペースで2分以上走ることで最大酸素摂取量を刺激すると言われています。つまり、大抵の場合400mだけでは足りないのです。

 では2分以上走る必要があって「どこまで」走れば良いのでしょうか?それは乳酸蓄積による速度低下を考慮する必要があります。ダニエルズさんはそれを踏まえて「最大5分以内」が良いと言っています。また長く疾走をとるほど休憩時間はそこまで厳密にこだわらなくて良く、だいたい疾走時間と同じくらいで良いと述べられています。5分疾走であれば、休憩は5分です。

 僕の場合、1600m(レスト5分)をインターバルトレーニングのメインにしています。ペースも5000mの目標ペースには届かず、10kmペースくらいです。 これはVDOT(ダニエルズさんの走力計算)に基づいて決めました。以下に計算アプリについて、リンク先貼っておきます↓

APPなら

https://apps.apple.com/jp/app/vdot-running-calculator/id973571014

Googleストアなら

https://play.google.com/store/apps/details?id=com.runsmartproject.vdot_calculator&hl=ja&raii=com.runsmartproject.vdot_calculator&pli=1

 気になる本数ですが「2分から最大酸素摂取量に至ること」また「3000mから5000mのレースが9〜15分間、最大酸素摂取量強度を持続させること」を想定します。そうすると5分間疾走のインターバルなら「9〜15÷(5−2)=3〜5本」といった本数が割り出されます。なので3〜5本。重要なレースに向けて仕上げるなら4〜5本くらいを経験して良いと感じています。私もこのやり方にして40歳で5000m14分台が出せました。

<身体の中で起こる反応>

 いろんな論文や書物を読み漁った結果、僕自身のインターバルトレーニングに対する見解は「速筋繊維(そっきんせんい;瞬発的な動きに優れた筋組織)における毛細血管と心臓の筋肉を養う練習」と考えています。ただ厳密にはミトコンドリア(エネルギー生産工場みたいな細胞)の発達も関わってきますし、筋の疲労耐性も改善してくるでしょう。

 少し余談になります。「最大酸素摂取量の改善=インターバル」みたいな記述をしてきましたが、それのみで最大酸素摂取量をあげている訳ではないです。広い意味ではジョギングでも酸素を取り込む要素「毛細血管」を養うわけですから、それも最大酸素摂取量の構成要素に関わるでしょう。その他の走力構成要素「乳酸作業閾値」についてもそうです。閾値走だけで改善させる訳ではなく、インターバルトレーニングであっても乳酸作業閾値改善に役立ちます。要は「どの体力要素も一番刺激しやすいトレーニングはこれだが、身体の反応を考慮しながら別法でもある程度賄(まかな)える」と考えたらいいでしょうか。また、閾値走のクオリティを上げるため、前日にインターバルをすることもあります。ただ私の場合、3日連続のインターバルと閾値走の組み合わせはあまりうまくいきません。

 また、速く走る意味もないわけではありません。実際には「種目特異性」と言って、レース直前の仕上げ期間は「レースペースのトレーニング」が必要になります。私も時には短いレストで200〜400mのインターバルを行うこともありますし、レースより短い距離でレースペース、あるいはそれ以上の速度で走ることもあります。ただし繰り返しますが、インターバルトレーニングの「速筋繊維における血管と心臓の筋肉を鍛える」という側面は、1600mのような距離をリピートすることよりやや劣ると考えられます。スピードを重視したトレーニングを行いたい場合は、レペティションやダッシュという方法がありますのでそちらで養いましょう!

最後に今回もよく登場するジャック・ダニエルズ氏の本「ダニエルズのランニングフォーミュラ」リンク先貼っておきますね↓


まとめ

・インターバルトレーニングは最大酸素摂取量を高めるトレーニングとして有効で、距離と休息時間を適切に設定することが重要※速すぎても本来の効果が期待できず疲労が残る

・特に「10kmくらいのレースペースで5分間 」を「3〜5本」「レストも5分」とるといったメニューがお勧め※レース前は実際のレーススピードを意識した練習も入れる

といったところでしょうか?みなさんにとってのインターバル走の位置付けどのように考えますか?ここまで読んでいただきありがとうございました!またよろしくお願いします。

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