大臀筋の秘密:お尻の筋肉を鍛えるとランニングがどう変わるのか?大臀筋「上部」と「下部」⁇ローディングアンローディング?トレーニングも紹介!

お尻の筋肉を使えるようにしなさい。ランナーのみなさんなら一度は聞いたことがあるこのフレーズ。でもその理由について深く教えてもらうことってあまりないのではないでしょうか?理由ももちろんのこと、具体的な方法までわかるとモチベーションにつながりますよね。

こんにちは!理学療法士ランナーの大森です。今回は、ランニングに興味がある方や、もっとパフォーマンスを上げたいと思っている方々に向けて、大臀筋(グルテウス・マキシマス)がどれほど重要かについてお話しします。

まず、大臀筋って何?と思う方もいるかもしれませんね。簡単に言うと、お尻の大きな筋肉のことなんです。この筋肉が、実はランニングにとってとても大切なんです。

なぜかというと、まずは股関節のモビリティ、つまり動きやすさに関係があります。

大臀筋がしっかり働くことで、股関節がスムーズに動くようになります。これができると、ランニング中に柔軟に体を動かせるので、スピードも上がりますし、長時間走っても疲れにくくなります。

目次

上下ある大臀筋の解剖学

大臀筋(だいでんきん)は上部と下部で役割が少し異なります。それぞれがランニングにどう影響するのか見ていきましょう。

大臀筋上部の役割

大臀筋上部は、股関節を外側に広げたり、外側に回す(外転・外旋)役割を持っています。これがランニングにどう影響するのかというと、足を外に踏み出す動きや、バランスを取る時に重要です。特にスピードを上げる時に大切な筋肉です。一般的にお尻を鍛えるというと、だいたいこちら上部の強化のみが取りだたされている印象です。

大臀筋下部の役割

一方、大臀筋下部は、股関節を伸ばしたり内側に回す(伸展・内旋)役割を持っています。これがランニングにどう影響するかというと、足を後ろに蹴り出す時や、地面を強く押し出す時に重要です。つまり、前進する力を生み出す重要な筋肉です。こちらの下部繊維は重要な割にあまりクローズアップされていない印象を持ちます。

ローディング アンローディング

「ローディング」と「アンローディング」について詳しく見ていきましょう。これらのフェーズは、筋肉と関節にかかる力の変化を理解し、効果的な運動パフォーマンスを達成するためにとても重要です。

まずは、ローディング(loading)フェーズについてです。

ローディング(loading)フェーズ

ローディングフェーズは、スクワットジャンプを例に例えるとその動作の途中で筋肉がエネルギーを蓄える段階を指します。

具体的には、ジャンプする前に膝を曲げて体を下げる動作がローディングフェーズに該当します。

このフェーズでは、お尻の筋肉、特に大臀筋を中心に大腿四頭筋、ハムストリング、などが伸張され、弾性エネルギーを蓄えます。

ローディングフェーズは、筋肉と腱の伸張反射を利用して、次に行うジャンプに必要な力を生成するためにとても重要です。

次に、アンローディング(unloading)フェーズについて見ていきましょう。

アンローディング(unloading)フェーズ

 アンローディングフェーズは、蓄えたエネルギーを解放して実際にジャンプする動作を指します。

具体的には、膝を伸ばして体を上方に押し上げる動きがアンローディングフェーズに該当します。

このフェーズでは、筋肉が収縮し、蓄えられた弾性エネルギーが解放されることで、爆発的な力が生み出されます。

アンローディングは、高くジャンプするために必要な力を最大化するためとても重要です。

ランニングはこのローディングとアンローディングを中心とした素早いジャンプの繰り返しです。そしてお尻の筋肉大臀筋が、ローディングとアンローディングといった動作の中心になるのです。このことを理解し、お尻の筋力を強化することで、ランニングのパフォーマンスを向上させることができます。個人的にはこのローデイング・アンローディングが反対脚、つまりは振り出し脚が前に出せる時間的猶予も作り出せると感じています。ちょっと何言ってるかわかんないと言われるかもしれませんが、要はストライドの伸びにもつながると言うことです。私は現在右の脚が暴れるようなランナーズジストニアを抱えていて、右脚の接地場面における左脚の振り出しが弱い傾向にあります。でも右のお尻への乗り込みがしっかりできている時は、左脚も振り出せていて、ジストニアの感覚も多少抑えられる気がしています。

トレーニングの紹介

以上の理由からランニングにも大臀筋のトレーニングを取り入れてみてくださいね!それではいくつかのエクササイズとそのやり方を見ていきましょう!シーズンオフには頻度やset数多めに、シーズン中は頻度やset数を減らして維持することをお勧めします。中学生はウェイトを持たないで筋肉の使われている感覚を意識してやれれば十分です。

1. スクワット

スクワットは大臀筋全体を鍛えるのに最適なエクササイズです。

スタートポジション: 足を肩幅かそれより開いて立ちます。つま先はやや外側に向けましょう。

動作: 胸を張り、背中をまっすぐ保ちながらお尻を後ろに引くようにして腰を落としていきます。膝がつま先より前に出ないように注意してください。

ポイント: 膝が90度になるくらいまで下げたら、元の位置に戻ります。個人的にはこの際ゆっくりお尻を落とし素早く元の位置に戻ることをお勧めします。お尻を意識しながら動作を行うことで、大臀筋にしっかり効かせることができます。

2. 片脚ブリッジ

片脚ブリッジは大臀筋と対側(たいそく)の腹斜筋を同時に鍛えます。

スタートポジション: 仰向けに寝て膝を立てます。片脚を上げてもう片方の脚で地面を押します。

動作: お尻を持ち上げ、体が一直線になるようにします。この時、上げた脚も体と一直線になるように保ちます。

ポイント: お尻をしっかり締めつつ、対側の腹斜筋も意識して体幹を安定させましょう。対側の骨盤が下がらないようにすることが大事です。

数秒間キープしてからゆっくりと元の位置に戻ります。

3. クロスオーバーランジ

クロスオーバーランジは大臀筋下部繊維を特に強化するのに効果的です。

スタートポジション: 直立し、片脚を後ろにクロスするようにしてステップを踏みます。

動作: 後ろに下げた脚の膝を地面に近づけるようにしながら腰を落とします。前に出した方の脚の大臀筋を意識して体を支えます。

ポイント: 前脚の膝がつま先より前に出ないように注意し、またできるだけ拇指頭に体重がかかり続けるようにしましょう。戻るときは大臀筋を使って元の位置に戻ります。

低酸素環境を利用したウェイトトレーニング

最後に低酸素環境下におけるウェイトトレーニングがどのような効果をもたらすのかについてお話しします。まず、低酸素環境とは何かについて簡単に説明します。低酸素環境とは、酸素濃度が通常よりも低い状態のことを指します。標高が高い山岳地帯や特殊なトレーニング施設でこれを再現することができます。低酸素環境でのトレーニングは、主に持久力を向上させるために利用されてきましたが、最近の研究では筋力トレーニングにも効果があることがわかってきました。これは非常に興味深いテーマであり、特に筋力トレーニングやフィットネスに興味がある方には必見です。

確かに近年、高地民族ケニア選手の中で、やり投げや400mといったスプリントやパワー系種目でもオリンピックメダリストが現れています。この実績から私は低酸素環境に筋力向上の優位性は確かにありそうだと感じています。

一番下に低酸素環境下におけるウェイトトレーニングの効果に関する論文タイトル3つほど載せておきますね。ご興味のある方は調べてみてください!少し宣伝になってしまい恐縮ですが、私のパーソナルトレーニング施設アフロランニング&ボディメイクでも、2025年1月から「低酸素環境を利用したウェイトトレーニングサービス」も展開する予定です。

まとめ

今回の動画ではお尻の筋肉大臀筋には上部繊維と下部繊維があってそれらがランニングにどのように関係するかや、ローディング・アンローディングが大臀筋とどう関係するかについて見てきました。これからもランニングに役立つ情報をどんどんお届けしますので、YouTubeもぜひチャンネル登録してお待ちください。また、私は静岡県富士市でランニング専門の治療とパーソナルトレーニングを行っています。

それでは、また次回の投稿でお会いしましょう。今日もご閲覧ありがとうございました!

論文紹介;低酸素環境下でのレジスタンストレーニング

・低酸素環境におけるトレーニングが通常の環境でのトレーニングに比べて筋肉の成長をより促進する可能性👇

「Hypoxia enhances muscle hypertrophy induced by resistance training」**- 著者: Nishimura, A., Sugita, M., Kato, K., Fukuda, A., Sudo, A., Uchida, A.- 雑誌: Medicine & Science in Sports & Exercise- 発行年: 2010)

・他以下の論文でも低酸素環境でのウェイトトレーニングがどのように筋肉の成長や筋力の向上に寄与するかについて述べられています👇

「Effects of resistance training under hypoxic conditions on muscle hypertrophy and strength」 著者: Manimmanakorn, A., Hamlin, M. J., Ross, J. J., Taylor, R., Neki, M.雑誌: Clinical Physiology and Functional Imaging発行年: 2013

「Effects of hypoxic resistance training on muscle hypertrophy and strength in healthy young adults: A systematic review and meta-analysis」著者: Scott, B. R., Slattery, K. M., Sculley, D. V., Dascombe, B. J.- 雑誌: Sports Medicine – 発行年: 2014

・以下は低酸素環境下でのレジスタンストレーニングは、筋肥大を避けつつ筋力を向上させるといった論文です👇

「Strength and muscle mass development after a resistance-training period at terrestrial and normobaric intermittent hypoxia 」C Benavente et al. Pflugers Arch. 2024 Aug

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